すももハウスでの栽培は雨除けハウス内での根域制限栽培と考えていますが、栽培開始から丁度3年が経過しましたのでこれまでの結果と問題点をまとめておきます。家庭果樹でスモモを栽培したいと考えられている方の参考にもなると思います。
現在すももハウスではスモモ15品種で120本、ほかにサクランボやアンズなど数本を同じ方法で栽培しており、元々ミニ果樹園(自宅の庭)で鉢植えで栽培していた経験から独自の方法をとっている。
概要: 根域制限バックを二重にして利用し根域制限栽培によるコンパクト化と早期収穫を目指す。
用土: 排水性、保水性及び樹体の安定性を考慮し市販の培養土と赤玉土を組み合わせる。
肥料他:9月に苦土石灰を内側ポット内に、発酵鶏糞、化成肥料を外側バック内にそれぞれ適量施肥。
灌水: 3月開花前~10月末まで朝夕2回/日 冬季は気温の上がる午後に1回/日 タイマー設定し灌チューブ・灌水ドリッパより灌水、灌水時間は水圧や気温により変える。樹勢やバッグ外への漏れ状況で調整。当初は1鉢1個のドリッパーをセットしたが、バッグ内で灌水むらが出たため1鉢2個に増設。
苗木の植付:2014年11月に苗木を購入したが、ハウスの有る長野県飯田市では冬季の最低気温が氷点下10℃以下になることもあるため、念のためポリポットに仮植えして名古屋で越冬し、翌2015年3月に内側のポットに植付、その後ハウスの片づけが終わった7月に外側のバッグにセットした。
苗木の配置:ハウスは間口18mx奥行45mのため、異品種間での受粉がしやすいように縦に10品種20本ずつ6列に品種が重ならないように配置した。
2年目の成長状況・開花・結実:以上の状態で2年目の2016年3月までに樹高2m程度となり、ほとんどの品種で開花し1本で数個の結実があった。紅りょうぜんなど早生種については収穫できたが、中生~晩生の品種はシンクイムシの害が多くまともな収穫には至らなかった。
3年目の成長状況・開花・結実:3年目の2017年3月までに高いものでは樹高3m程度になったものがあり、場所によりハウスの天井に届いたのと、作業性を考慮して先端部の選定を実施。またカイガラムシが観察されたのでブラシによる除去と石灰硫黄合剤を散布。開花後にシンクイムシ対策としてハウス側面全部に防虫ネットを張る。4月末にアブラムシとシンクイムシ防除のため薬剤(モスピラン)を散布。
3月にほぼ全ての品種で開花があり、念のため梵天で受粉作業を実施したところ結実良く、4月から5月に順次摘果する。
6月末収穫のメスレーは収穫遅れのためか品質不良であったが、その後に収穫した紅りょうぜん、サマーエンジェル、李王、大石中生、彩の姫、月光、ケルシーなどは品種により1本で十数個から数十個、重量で合計数十キロ収穫でき、糖度は熟度により収穫開始時と終了時で差があったが、各品種の説明にある糖度の高い値を超える数値になった。特に李王・月光・ケルシーは甘酸のバランスも良く、果汁多く満足できるものであった。
但し李王の収穫期間中に灌水設定のミスから水枯れがあり、不良果を出してしまった。また夏季の暑さ(ハウス内の最高気温45℃以上)のためかレートソルダムや秋姫では焼けと思われる症状が出て収穫に至らなかった。 シンクイムシについては防虫ネット・薬剤防除の効果が良く発生は皆無であった。なお全般に摘果不足からの結果過多か、もしくは根域制限栽培のためか果実が小さ目(ケルシーなど大型の品種でも100g強)であった。
暑さ対策としてハウス妻面の一部フィルムを防虫ネットに交換し風通しの改善を図った。また前年以上にカイガラムシの発生があり一部の樹で枯れこみが見られたため、前年より早く12月前半に落葉を待って剪定し、石灰硫黄合剤の散布を実施した。1月にマシン油の散布を予定し状況を見ることとする。
4年目2018年の課題 カイガラムシの害は樹勢が弱った樹ほど被害が大きく、背景には夏季の高温が大きく影響していると考えられる。ハウス妻面からの風通し改善を図っているが、状況によっては屋根南面の遮光ネット設置も検討している。
不織布バッグの使用で通常の鉢やコンテナより根詰まりしにくいと思われるが、4年目となり状況確認が必要か。
2017年12月現在 各品種ともに非常に多くの花芽が着いており、順調であれば1本で50個以上ハウス全体で5000個(数百㎏)の収穫を目論んでいるが、花芽が多いということは樹勢が弱くなりすぎている可能性もあり観察と対応が欠かせない。
以上ですが、ネットで検索してもこのような栽培の具体例にたどり着けず試行錯誤中です。美味しいスモモをたくさん収穫するためアドバイスいただければ幸いです。
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初めまして、静岡県から発信です。庭に2~3本スモモを栽培予定です。二重にポットをした理由は
コンパクト化と早期収穫。家庭栽培としてはとても魅力的です。そこでお聞きします。
1.その後の改良改善した点などはありませんか?
2.灌水は内側ポットにするのでしょうか?その場合外ポットにも水が回るでしょうか?
3.培養土は腐植化して少なくなると思われます。対策などは?
4.肥料計算なにか参考はありませんか?
かってな質問ばかりですがよろしくお願いします。
はじめまして、こちらこそよろしくお願いします。
ご質問の件ですが順にお答えします。
1.その後の改良点
年数が経過しポット内の雑草の繁殖が旺盛になってきたため土を追加したときにポットの上に防草シートを被せるようにし、点滴灌水はシートの上から行っていますが今のところ問題ないようです。
2.灌水は内側のポットにしていますが、外側の表面が乾くのと、肥料を与えても水が無いと効かないので1-2か月に一度は内外全体に回るようにホースでたっぷりと水遣りをしています。根が外側のポットに出るまでは内側に灌水する必要があると思います。点滴灌水の量を増やすと外側のポットの外にも漏れるのが多くなり雑草を育てることになります。樹の様子を見て調整が必要と思います。
ハウス内は高温になるため特に晩生種は焼け果が多く失敗を繰り返していますが、灌水の問題もあるかもしれません。
3.培養土の減少はあるようです。樹が小さいうちは内側ポットだけでも実が付くようですし、最初から土が多いと移動が必要になったときに取扱いが大変になりますので年々土を追加するのが経済的にも良いと思っています。年数が経過して思っていたより樹冠が大きくなっても移動できるメリットもあります。
現在は近くのキノコ栽培所から廃菌床を頂けたので、これをポットの上から追加しています。
4.肥料計算はしておらず勘の世界です(;^_^A。
根域が限られていますので根腐れをしないように少なめにするのが安全と思います。
秋に発酵鶏糞と化成肥料を遣っていますが、灌水が不足すると効きませんので試行錯誤中です。春に花が終わってから葉の色や新芽の伸びを観察して、アブラムシやシンクイムシ対策の薬剤散布と合わせて尿素を葉面散布しています。
上記のようなやり方をしていますが、毎年1-2本突然枯れてしまう樹が出ています。原因はまだ分かりませんが、どこかに無理があるのかもしれません。 ついつい沢山収穫したくて摘果が不足したりして樹勢を弱らせているのでは
とも感じています。
なお、3-4年生のメスレーを二重ポットのままハウスから移動して屋外の畑に埋めて栽培していただいている方もいます。灌水は雨だけで、移動して1-2年ですが今のところ大丈夫なようで、収穫できているものもあります。
以上参考にならないかもしれませんがお許しください。
美味しい実が収穫できるように願っています。
SUMOMO様
早速詳しいお返事ありがとうございます。
何年か経つと外ポットに伸びた根も密集して、酸欠にはならないのでしょうか?
実はポット栽培は何かと煩雑なので、地植えにしようか迷い始めました。
そろそろ苗木を準備する時期が来ましたね。
スモモの木は地植えだと仕立て方次第ですが樹高4m以上になり選定や薬剤散布・収穫も大変になります。
その代わり沢山収穫することができますので、場所に余裕があるのであれば楽しみも多いと思います。
一方でポット栽培は小ぶりな木に収まるのと結実までの年数が短いので、選んだ品種で思っていた結果が出なかった場合に
別の品種に変えるのも比較的容易と思います。
地植えにした品種を接ぎ木などで切り替えるのもなかなか大変なので、ポット栽培で始めて2-3年様子を見て、
結果が良ければポットを破って地植えにするのもいいかもしれませんね。
ポット栽培初めて5-6年経過したものもありますが、今のところ酸欠などはないようです。通常の鉢植えと違って
不織布ポットは根詰まりしにくいと思います。ただし稀に外ポットから地面に根が出て伸びてしまうことが
ありますので年に一度ポットごと傾けて様子を見ています。もし太い根が出ている場合は切断しています。
いろいろ考えられるのも楽しみと思います。よい結果が出ますように。
SUMOMO様
前回は詳細なコメントありがとうございました。あれからケルシー、李王、ソルダム、大石早生を不織布ポット、自動潅水で栽培はじめました。庭は広くないので一鉢当たり1.5平米相当しかありません。そこでお聞きしたいのですが
二年生苗から4本程度の枝が出ていますが何本仕立てにしたらいいのかわかりません。ちょうど姫リンゴの木のように1ないしは2本の主枝を上に伸ばし、これに直接着果するように仕立てればいいのかなーと思ったりしています。それが可能かどうかわかりませんが。
よろしくお願いします。
今年になって全く更新できておらず申し訳ありません。
スモモハウスには250坪のハウスにスモモが120本あり、込み合ったところでは60坪に40本植わっています。
木の小さいうちはどんな仕立てでも良かったのですが、最近は木のボリュームが大きくなってきたのと
出来るだけ収穫を増やしたいため試行錯誤しています。
横に広げるスペースがありませんので品種によって主枝を1~3本に間引き、それに直接着果させているものもあります。
大石早生は育ていませんので分かりませんが、李王やケルシーは実付きが良くて仕立て方にはあまり気を使っておらず、
主枝に直接着果しているのもあります。但しこの場合は支柱に誘引結束をしておかないと果実の肥大とともに折れ曲がって、
ひどい時には枝の付け根から折れてしまうこともあります。
主枝を何本にするのかはスペースと作業性、日当たりなどを考慮されれば良いと思います。
なおポット栽培の場合は結実過多などで樹勢が弱くなりやすいようです。スモモハウスの場合では樹勢が落ちると
カイガラムシの害がひどくなり枯れこんできます。この場合は主枝を思い切って強選定し、出てきた徒長枝を利用して
主枝を更新し樹勢を上げるようにしています。
今年2020年は受粉が上手くいったようで結実が多く期待したのですが、逆に摘果が不十分で結果過多となり枝折れしたり、
長雨の日照不足で糖度が上がらず残念な品質となりました、気象条件の悪い時ほど適切な管理が必要と反省しています。
SUMOMO様
いつもながら早速のお返事ありがとうございます。
とても参考になりました。ケルシーと李王が本命ですので
育ちを見ながら樹の大きさを剪定したいと思います。